功利主義の全体像を哲学生が解説 第58話
〈特に想定している方〉
・学問(特に哲学)に興味がある方
・自分の「道徳観」について考えたことがない方
・善悪の明確な判断基準がない方
・暇な方(笑)
こんにちは!!!
昨日まではカントの道徳観を解説致しました。
今日は「コラム」として、カントの道徳観の解説途中に出てきた「功利主義」を解説したいと思います!!
「今自分はこの行動をすべきか?」「友だちの彼女が浮気していたことを友だちに報告するべきか?」
このような悩みの相談者になってくれることでしょう!!
まずは功利主義の概要から、その後主要な功利主義者を取り上げていきます!
功利主義に関する3つのキーワード
功利主義を語る上で大事なキーワードは「結果」「ベンサム」「J.S.ミル」でしょうか。
高校で倫理や政経で習う方も多いかと思いますが、じっくり解説をしていこうと思います!!
その前に押さえておきたい知識として、
功利(功利性、効用)とは、利益や快楽を増大させることを信条とし、苦痛や不幸をもたらす行為を否認する功利の原理を道徳的判断の基準とすることです。
つまり、幸せを享受して不幸は排除しようぜということです!
この思想を念頭におきつつ今後のブログを見ていってください!!
1.結果
復習です。昨日のカント解説で言及した善悪の判断基準を覚えていますでしょうか。
通常我々は「原則」「意志」に基づいて「行為」を行い、その先に「結果」があるというプロセスを辿るかと思います。
①「原則」「意志」
私は決して嘘を言わない
②「行動」
友人に対して嘘をつかず正直に「君のそういうところは苦手だ」と伝える
③結果
友人に「指摘してくれてありがとう!」と感謝をされる
カントは良し悪しの判断基準として「原則」「意志」を大事にしましたが(詳しくは1個前のブログで)
功利主義者は「結果」の良し悪しから、道徳観を導きます。
結果が良ければ道徳的なのです。
2.ベンサム
イギリスの哲学者・法学者であるベンサム。
この人が功利主義の代表格です!
ベンサムの有名な言葉として、「最大多数の最大幸福」と呼ばれるものがあります。
これは、社会は個々人の総和であるため個々人の幸福の総和が社会全体の幸福に繋がるという意味です。
つまり、一人ひとりが幸せになれば、社会全体も幸せになるよねということです。
(この資本主義の世の中では理想論と言われてもおかしくない気はしますが、、、)
この標語が道徳の原理であり、立法や行政の指導理念になると彼は説きました。
しっかり「結果」の位置から善悪を、すなわち道徳を考察しているんです。
あとは「快楽計算」と呼ばれる概念も提唱していますが、本筋から逸れるのでスルーしましょう!
ベンサムは総和、つまり「量」的な幸福を意識したというのが思想の本質です。
3.J.S.ミル
同じ功利主義者でありながら、ベンサムと違った立場を唱えるのがミルです。
ベンサムは「量」でした。なぜこの点を強調したのか。
それはミルが「質」的功利主義の立場を取るからです。
この両者は対立するわけではありません。
ベンサムの量的功利主義をミルが修正していくという立ち位置なんです。
感覚的レベルの快楽もあれば、人間の尊厳レベルの快楽もあるでしょ。ということです。
そんなミルは、人間は「利他心」を持つ存在であると述べます。
つまり人間は利己的な存在で終止するのではなく、他者への同情を持ち合わせているのです。
そんな利他的感情を満たし(人に親切にする的な)、人類普遍の幸せを追求するところにミルの本質が見えます。
そんな「人間」の尊厳や品位の感覚にふさわしい精神的快楽(上質)を表したミルのセリフを記載しておきます。
「満足した豚であるよりは、不満足な人間であるほうがよく、満足した愚か者であるよりは、不満足なソクラテスであるほうがよい」 『功利主義』 著 ミル より。
時代背景も相まってか、「人間中心主義」が根底にある気もしますね。
後日考察しようと思います。
4.まとめ
どうでしたでしょうか。
カントよりかは功利主義のほうが今の我々にイメージが付きやすいかもしれません。
だからこそ、カントを先に解説しました!!
違う思想に触れて自分の価値観をブラッシュアップしていくのは大事ですよね!
明日はストックしてあった書籍のレビューブログを公開したいと思います!!
お楽しみにしていてください!!